本記事では、私が好きな小説家である宮部みゆきさんの火車(かしゃ)をご紹介します。
本作品は、様々な読み方ができ、何度も読んでも楽しめる、考えさせられました。
目次
足があるように映る鏡を売りつける賢い蛇
早速ですが、本作品で印象深いシーンを紹介します。
「脱皮っていうのは-」
「皮を脱いでいくでしょう? あれ、命懸けなんですってね。すごいエネルギーが要るんでしょう。それでも、そんなことをやってる。どうしてだかわかります?」
本間より先に、保が答えた。「成長するためじゃないですか」
富美恵は笑った。「いいえ、一所懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、いつかは足が生えてくるって信じているからなんですってさ。今度こそ、今度こそってね」
べつにいいじゃないのね、足なんか生えてこなくても、蛇なんだからさ。立派に蛇なんだから。富美恵は呟いた。
「だけど、蛇は思っているの。足があるほうがいい。足があるほうが幸せだって。そこまでが。あたしの亭主のご高説。で、そこから先はあたしの説だんだけど、この世の中には、足は欲しいけど、脱皮に疲れてしまったり、怠け者だったり、脱皮の仕方を知らない蛇は、いっぱいいるわけよ。そういう蛇に、足があるように映る鏡を売りつける賢い蛇もいるというわけ。そして、借金してもその鏡がほしいと思う蛇もいるんですよ」
このシーンから次のようなことを考えさせられました。
- 情報商材は購入者を騙そうとする賢い蛇がいるかもしれない
- どんなに背伸びしてもなれないものはある
物語は、クレジットカードと自己破産
クレジットカード、自己破産という闇に焦点を当てた物語です。
私自身、この本を3度、読んだことがあります。
1度目は、学生時代ということもあり、クレジットカードを保有しておらず、
クレジットカードの便利さや怖さを知らなかったです。
クレジットカードを保有していなかったこともあり、自己破産や自己破産後の周りの環境が想像できなかったのを覚えています。
どちらかというと、物語にある、ある女性は誰で、どこにいるかという謎に面白さを感じていました。
2、3度目に読んだときは、クレジットカードを使用しており、
こんな闇があるんだと知りながら読み進めました。
物語には、次のようなことを勉強しました。
- クレジットカードで自己破産する人がいる
- クレジットカード、自己破産について正しい知識を持つ重要さ
- 自己破産する人が全員自業自得とはいえない
自己破産の件数
本作品のテーマになっている自己破産ですが、その件数はどの程度のものなのでしょうか。
件数については、裁判所の「司法統計」から確認することができます。
URLはこちら。
クレジットカードの保有有無に関わらず楽しめる
本作品はクレジットカード保有有無に関わらず、とても面白く読むことができ、
フィクションとは思えないほどのリアルさを感じました。
登場人物の一人は、自分の過去を清算するべく、身分を別の人へ変えて、生活をします。
実は、変えた人物側が過去に自己破産をしていたことがあり、その事実が物語を複雑にして興味深いものにしていきます。
人には、様々な背景を持っており、そういう背景が人を強くしたり、人を作っていくのだと、この本を読んで思うようになりました。
宮部みゆきさんの作家活動のインタビューや執筆中の考えが詰まった本は、ファンには貴重な著書となっています。
宮部みゆきさんの小説は、読んでいてとても現実性があると感じます。
それは、宮部みゆきさんの足で稼いだ情報収集によるものではないでしょうか。
私自身、情報を発信する者として、足で稼ぐという努力を怠らないようにしていきたいものです。